何故言ってくれないの?
10月16日、2020年のオリンピックのマラソン会場が急遽札幌に決まったことで、
都知事はおカンムリであった。
暑い夏に対応できるように様々な工夫をしてきただけに、戸惑うのは理解できる。
都知事にとって一番納得がいかないのは、開催地である東京都のトップである自分が、
蚊帳の外に置かれたままの決定だったことであろう。
面子を潰された、ということに我慢がならない。
こういうことは、私たちの身の上にも頻繁に起こり得る。
そういう時は、誰しも「何故初めから言ってくれなかったのか?」と思うことだろう。
だがもしも都知事にこの案を事前に伝えていたら、都知事はその案を吞んだであろうか?
勿論強硬に反対したであろう。
何故なら「東京」オリンピックなのだから。
関東圏なら理解もできるし、福島は震災復興という大名目がある。
だが、「札幌?何故?」。
都知事がそう考えるであろうことは、容易に想像できる。
だから森JOC会長は都知事に言わずに、IOCの意向として強行した。
「あのひとなら分かってくれる」。
そう思う相手には、誰だって初めから相談するだろう。
誰が考えても、それが問題を最小にする為の一番賢い対処法なのだから。
「言っても相手(B)は応じない」だろうと思っている時、ひと(A)は言わないままに強行する。
その根底には、AのBに対する不信感がある。
Aに言わせれば、その不信感はBの過去の言動によって導き出された結論だと言える。
人というものは、自分の過去の行動などいちいち覚えてはいない。
だからBは腹が立つ。
「○○なんだから、(事前に私に)言って当然でしょう!」
「私は都知事なんだから、言って当然でしょう!」
「私は妻なんだから、言って当然でしょう!」
「私は友人なんだから、言って当然でしょう!」
「私は〇〇なんだから、言って当然でしょう!」
そうやって人間は、相手に不信感を抱かせた過去の自分の在りようは顧みず、
相手の在りようが自分に対して理不尽だと怒り出す。
都知事の場合、何ひとつ問題が無かった築地から豊洲への移転を、
とあるグループからそそのかされて2年も渋った結果、
途方もない金額の血税を無駄にしたばかりでなく、
交通渋滞の緩和の為に計画されていた道路も作れず、
築地市場跡地を充てる予定だったオリンピック用車両約3000台分の駐車場も、
結局間に合わなくなってしまった。
オリンピックをスムースに進行させるために是非物の、
道路や駐車場の建設のゴーサイン・リミットは初めから決まっていたのに、
都知事は周囲の声に全く耳を傾けなかった。
縮小縮小でどうにか形だけは間に合わせるつもりでいるようだが、
大会期間中の渋滞と混乱は避けられない見通しだ。
何を思ったのか都知事は「オリンピック期間中は通信販売を利用しないで」と言った。
「???」
その理由を本人は、
「物流倉庫が豊洲に集中しているので、トラックで混雑させない為に」と言っている。
これを冗談ではなく、大真面目で言っているらしい。
奇策はそれだけではない。
オリンピックの開会式と閉会式当日は、首都高速の一般車両の通行は禁止され、
それ以外の日は、料金が2倍に跳ね上がる。これも「混雑緩和策」なのだそうだ。
「自分の政策の失態を都民に押し付けている」と言われても、致し方の無いほどの無策ぶりだ。
この一件のお陰で、役人も工事関係者も右往左往させられたことだろう。
都知事の国会議員時代のこともよく知っている森さん(A)に言わせれば、
オリンピック開催にこれだけダメージを与えた都知事(B)には、
もう一切口を挟まないでほしいと思っていることだろう。
だから森さん(A)は、都知事(B)に事前に報告せずに、強行突破した。
(B)は自分がやったことなど、とうの昔に忘れている。
こんな時の脳は、感情だけで思考する。
「合意無き決定」
だから正論を言って、相手を非難する。
しかし、その非をあげつらっているだけでは、問題は泥沼化する。
成熟した魂霊の持ち主なら、自分の何がそうさせたのかをまずは省みることだろう。
自分にとって、あまりにも不条理と思える事象の中にこそ、学ぶべきことが隠れている。
それを学ぶ為に、私たちは地球に生まれてきている。
学ぶことを望まないのであれば、地球に生まれた根本的な理由すら否定することになる。
本末転倒とはこのことだろう。